―――きっかけは、とても些細な事だったのだ。

いつものように、ネウロに呼び出されて弥子が学校帰りに事務所に寄った時の事だった。


「遅い」


事務所の椅子にふんぞり返って座り、両足を机の上に投げ出した姿勢のまま、

ネウロは不機嫌そうに言い放った。


「ごめんごめん! 学校帰りにあるクレープ屋にね、

 限定メニューの〜抹茶あずき白玉クリームスペシャル・ほうじ茶アイスのせ〜が売っててね、

 その悩殺的なビジュアルと言ったら、もう! あれの魅力に堕ちないヤツなんていないよ!!」


ネウロの呼び出しは絶対とは言え、女子高生探偵・桂木弥子は食べ物の誘惑にだけはめっぽう弱かった。


「ほう。そんな下らない理由で我が輩を待たせたと言うのか」

「だから、ごめんってば! 限定メニューだから、今回逃したら次はまたいつ食べれるかわかんないし…。

 クレープだったら、叶絵も喜んで付き合ってくれるし」

「…弁解を聞くつもりはない。

 我が輩が謎を喰えずに腹を空かせて待っていたというのに、

 そうか、貴様は呑気に友人と買い食いか。いい身分だな、ヤコ」

「もー、だから悪かったって言ってるじゃん! これからあんたの謎解きに付き合ってあげるから…」


その途端、弥子の両手がネウロによって押さえつけられ、一気に後ろ手に捻りあげられる。


「いたたたっ! ちょっ、何す…」

「奴隷の身分で主人を待たせた罰だ。

 自分の立場をわきまえていない奴隷には、どうやらお仕置きが必要なようだな」

「わっ、暴力反対!…って、えぇっ!?」


弥子が抵抗しようと体を捻った時には、既にその両手首には左右それぞれに手錠が掛けられていた。

動揺している弥子を尻目に、ネウロは慣れた手つきで手錠ごと弥子をくいっと引き寄せると、

今まで自分が座っていた事務所の椅子の左右のひじ置きへと、手錠のもう片側をそれぞれ固定した。

手錠で椅子に繋がれ、自然と椅子に座る格好になってしまった弥子の両足も、更に取り出した手錠で椅子の足へと拘束する。

手錠のチェーンの部分があるので全く動かないわけではないが、その先が椅子に繋がれている以上、

むやみに暴れれば椅子ごと転倒するのは明らかだった。


「ちょっと、ネウロ、何すんの…わっ!
何っ!?」

 「黙れ」


急に髪の毛を掴まれて上を向かされたかと思うと、反射的に開いた口の中へと何かの液体を振り掛けられた。

弥子はすぐにそれを吐き出そうとしたが、即座に口を手で塞がれてしまってはそれも叶わず、思わず飲み込んでしまった。

ネウロはと言うと、涼しい顔をして、妖しい色の液体が入った小瓶を指先で弄んでいる。

一体どんな猛毒を飲まされたのかと危惧していた弥子だが、その液体の味自体は苦みの中にもほんのり甘味があり、

体に特に何か異変が起きたわけでもなさそうだった。


「さて、我が輩は一人で謎を探しに行ってくる。

 本当は貴様を連れていく予定だったのだが、馬鹿な奴隷にはお仕置きが必要だからな。

 貴様はそこで留守番をしているといい」

「ちょっと!
こんな状態で置いてかないでよー!」


弥子の必死の抗議も虚しく、ネウロは事務所を出ていってしまった。


「あーもう、何だって私がこんな目に…」


いつもの事とは言え、理不尽に振り回されて弥子は文句を言ったが、

あのネウロの「お仕置き」にしては随分と楽なものだった事に、弥子は少し拍子抜けしていた。


(まさか、このまま夜まで帰ってこないで私を飢え死にさせる気、とか…?

 でも、いざとなれば椅子ごと引きずって移動もできるし、鞄の中におやつの食パン一斤とポテチが一袋入ってるもんね…。

 今日一日くらいなら何とかなるでしょ)


この時点で弥子は、ネウロのお仕置きにしては随分軽いな、くらいにしか認識していなかった。

だがこの後、あのドS魔人を甘く見ていた事を痛烈に後悔する事になるのである。







徐々に弥子の体に異変が起き始めたのは、それから30分も経った頃だっただろうか。

ほとんど身動きが取れない状態にも関わらず、体が火照り、顔が上気してきた。

今まで経験した事のない感覚に、弥子は徐々に全身を侵されていく。


「なんなのっ、…コレっ…」


火照る体の奥の方から込み上げてくる疼き。

そしてそれは、弥子の一番恥ずかしい部分ではじけるように、際限なく押し寄せてくる。

今まで経験した事のない感覚に、弥子は動揺していた。

だが、混乱する意識の中で、ふとこのまま身を任せてしまうのもいいかもしれない、と思っている自分もいた。

それが“快楽”である事に、弥子自身はまだ気付いていないのであるが。

それから、どれくらいの時が経っただろう。

時間にすればほんの15分程度だったのかもしれないが、弥子にとっては永遠のように長くも感じた。

外部から刺激を与えられているわけでもないのに、体が快楽の波に蝕まれているのだ。

いや、いっその事、更なる刺激によって絶頂を迎えられたらどんなにか楽だろう。

両手両足を拘束された状態で、弥子は達する事もできず、熱く火照る肉体を持て余していた。

弥子の一番熱くなった部分からは、どろりとした透明な液体が溢れ、下着を濡らしていた。

このまま放っておいたら、事務所の革張りの椅子にも滲みだしてしまうだろう。

そんな姿をもし誰かに見られたら――そう思うと、羞恥の余りに弥子は戦慄した。

だが、その羞恥さえも、己の欲望に火をつける材料になっているとは、まだ弥子は自覚していなかった。

その時、突然音を立てて事務所の扉が開いた。




「!!」


快楽の余りに朦朧とする意識を何とか扉の方に向けると、そこには弥子をこんな状態にした張本人が不敵な笑みを浮かべて立っていた。


「ククク……効果はてきめんだったようだな」


そう言うネウロの手には、先ほど弥子に飲ませた妖しげなピンク色の液体が入った小瓶が握られていた。


「ちょっと、ネウロ…! …んっ…さっき私に、な、何飲ませたの…?」


呼吸すらも苦しいのか、途切れ途切れに抗議の声を上げる弥子。


「ほう、貴様にもそんな色っぽい声が出せたのだな」

「……っ!!」


弥子は抗議しようとしたが、実際、自分が今普通でない事は分かっていたから、反論の言葉が思い浮かばなかった。


「では、馬鹿な奴隷に教えてやろう。これは“官能の美酒(イビルドラッグ)”と言って、魔界の催淫剤だ」


そう言って、ネウロは弥子に徐々に近づいてくる。

弥子は身を捩って何とか逃げようとするが、椅子に拘束されている状態でそれが叶うはずもなく、あっけなく両腕を掴まれてしまう。


「お仕置きだと言ったはずだ。自身で達する事もできず、辛かっただろう…?」

「ば、馬鹿な事、言わないで…あぁっ…!」


不意に、弥子の秘所に開放感が訪れる。

ネウロがその爪で、弥子の制服のスカートを切り裂いたためだ。


「や、やめて…見ないで…」


弥子は泣きながら、顔を真っ赤にして俯いた。

それもそのはず、弥子の下着はぐっしょりと濡れていて、その液体は既に椅子にまで滲み出していたのだから。

その上、唯一恥ずかしい部分を隠してくれるはずの下着は濡れて肌に張り付いており、陰毛や割れ目までも見える程に透けていた。


「淫乱な奴め。これではお仕置きにならなかったか…?」

「いやあぁぁッ!…もう、やめて…」


泣き叫びながら、弥子は激しい恥辱と同時に淡い期待を感じていた。


「…欲しいんだろう?」

「…ッ!!」


突如耳元で囁かれた低い声音に、弥子の体が戦慄する。

その一瞬の隙をついて、ネウロの指が弥子の下着を突き破って最も熱い部分へと侵入してきた。


「…ほう。すごい事になってるぞ」

「やめて…言わないで…」


ぐちゅぐちゅと淫靡な水音を立てながら、ネウロは弥子の秘所をかき回した。

頭では、異常だとわかっているのに、気持ち悪くてたまらないはずなのに……弥子の肉体は、ネウロの指を欲していた。


「ククク…そんなに我が輩が欲しいか。腰を振ってねだるなど、いつからそんなに淫乱になったのだ、貴様は?」

「ちっ、違うのっ! 違うんだってばっ!」

「…では、やめるぞ」

「…ッ!」


一瞬、ネウロの指が離れた瞬間、弥子は思わずすがるようにネウロを見つめた。


「やめて欲しいのではなかったのか?」

「うっ…」


薬のせいとは言え、咄嗟にネウロに向けてしまった反応に、弥子は反論する事が出来なかった。



「続けてほしいんだろう?」


「………」


「…自分の欲望に正直になれ、ヤコ」



屈辱だと分かっていながら、弥子には懇願するしか道は残っていなかった。



「…つ、続けて」



涙を流しながら、声を絞り出すようにしてそう言うのがやっとだった。


それなのに、ネウロは非常にも言い放つ。



「奴隷のくせに、口の聞き方がわかっていないようだな。何をして欲しいのか、我が輩にわかるように言ってみろ」


「…この外道ッ!…ひッ!」



その途端、弥子の首先に鋭い鉤爪に変化したネウロの指が押し当てられる。



「さあ、何をして欲しいのか、言うんだ」



弥子はその瞬間、もう逃げられないのだと悟った。


そして朦朧とする意識の中で、そもそもここへ呼び出した理由というのが、自分を陥れるためだったのだと漸く理解し始めていた。



「お願い…もっと、触って…」


「よろしい」



弥子が懇願の言葉を発した瞬間、ネウロは弥子の下着を引きちぎり、その露わになった秘所へと中指を突き立てた。



「!!」



突然指を挿れられたために走った痛みに、弥子は思わず顔をしかめた。


だが、決してそれが不快な痛みでない事に、もう弥子も気付いていた。




―――こうしてネウロに堕ちていくのだ、自分は。




「せっかく我が輩が直々に貴様をイカせてやろうというのだ。もっと声を上げてよがってみせろ」


「…んっ…あっ、ああんっ」



耳元でネウロに囁かれたのが引き金になったのか、熱に浮かされたように弥子ははしたない声を上げた。



「フッ…淫乱な奴隷め」


「やっ…いやぁっ」


「嫌なら、やめるが」


「………やめ、ないで」


「いい子だ」



次の瞬間、弥子はその唇をネウロのそれによって塞がれていた。



「……!!」



反論しようにも、唇を塞がれていてはそれも出来ず、呆気に取られているうちに弥子はネウロの舌の侵入を許してしまっていた。


ネウロの舌が触手のように蠢き、弥子の口内を蹂躙する。


事務所の中に、絡み合う舌と舌が織り成す音と、濡れそぼった秘所を掻き回す水音のみが響いている。


的確なポイントを突いてくる指の動きに、既に弥子は限界まで高められていた。


挿入されている指が一本から二本、二本から三本に増えていく。



「あぁっ……いいっッ」


「ほう、そんなにいいのか」


「んッ、ふあぁっ…!」



ひだに隠れていた陰核を親指の腹で擦られ、弥子は思わず声を上げた。


皮をめくられて直接擦られる刺激に、電流が走ったような快感が弥子の体を襲う。


官能の美酒によって次々と体の中から押し寄せる劣情と、ネウロによって的確に与えられる快楽、

そしてそれらを上回る凄まじい羞恥心によって、弥子の体は既に限界を迎えようとしていた。


その時、突如弥子の唇が解放され、ネウロの唇が弥子の耳元に寄せられる。



「イけ」


「……んっ、ふぅっ……ああぁっっ!!」



ネウロの低い囁きが引き金となったのか、弥子は指だけであっけなく果てた。


事務所の椅子は、もはや使い物にならないレベルまで濡れてしまっていた。



「………貴様には、まだまだ調教が必要なようだな」



初めての絶頂を迎え、気を失っている弥子を見下ろしながら、ネウロは不敵な笑みを浮かべていた。






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