4月30日
弥子が事務所に監禁されてから、二日目。
悪夢のような初日は、ロープこそ解いてもらえなかったものの、就寝時には手錠と首輪が外され、
事務所のソファをベッド代わりとして宛がわれ、眠りについた所で終わった。
拘束は解かれているのだから、逃げ出そうと思えばそれも出来たのかもしれないが、
弥子はソファに横たわった瞬間、疲れのためか一気に眠気が押し寄せ、その夜はすぐに眠ってしまったのだった。
仮に逃げ出そうとしたとしても、ネウロがそれを許すはずは無いのだが。
目覚めた弥子は、自分の体を縛りつけている真っ赤なロープを見て、昨日の出来事が悪夢ではなく現実だった事を思い知り、がっくりとうなだれた。
昨日は余りにも異常な体験の連続で注意を払う事もなかったが、よくよく見てみると、自分が恐ろしく恥ずかしい格好をしている事に気付いた。
下着こそ穿かされているものの、その上からロープで締め付けられているため、陰裂の形はくっきりと強調されていたし、
あらわになった小振りの胸は、ロープによって乳房の形をいやというほど強調されていた。
弥子は、反射的に胸を手で覆い隠した。
昨日はずっと後ろ手に手錠をかけられていたため、それすらも叶わなかったのだ。
「うっ…くっ…」
弥子の口から鳴咽が漏れる。
せっかくのGWを潰された上、こんな惨めな扱いを受けている自分が情けなかった。
(…でも)
弥子の頭からは、昨日のネウロの台詞がどうしても離れなかった。
(…『誰にも渡したくない』か。もちろん、奴隷として、だろうけどさ)
それだけではない。昨日の「挨拶」の後、優しく抱きしめられた事も。
家畜以下の扱いを受けていてなお、そんな言葉や行為にとらわれてしまう自分に嫌気がさす。
(私、どうかしてる…。こんなの、異常すぎるのに)
その瞳から流れる涙が、辱められた屈辱と惨めさによるものなのか、それとも愛する男に支配される悦びからなのかは、弥子のみぞ知る所である。
「やっと起きたか、肉奴隷」
突如、頭上から聞こえてきた声に弥子は思わず顔を上げた。
「泣いていたのか」
「…当たり前でしょっ!
服も着せてもらえない上に、こんな風に縛られてっ…」
再び弥子は嗚咽を漏らし始めた。
「一体、何が望みなのだ」
「決まってるじゃない! 早く、このロープ解いてよぉっ…!!」
「…わかった。では解いてやろう」
「えっ……!?」
絶対に聞き入れられる事のない願いだと思っていただけに、余りにもあっさりと承諾され、弥子は拍子抜けしてしまった。
「一日中縛られていたのでは体も痛むだろう。シャワーでも浴びて疲れを癒すといい」
ネウロの親切すぎる言動にいささか不安を覚えないでもなかったが、ここで下手に反論してはその機会を取り上げられてしまうとも限らない。
ここは素直に好意として受け取っておくべきだと弥子は考えた。
「良かったぁ…。もう、このまま寝たから体の節々が痛かったよっ!」
複雑な結び目のロープをするすると解かれる。
弥子は持参したスーツケースの中から入浴道具一式を取り出すと、バスタオルにくるまって浴室に向かった。
(今まで、全裸よりももっと恥ずかしいカッコしてたんだから、今更タオル巻く必要ないのかもしれないけど…。でも、やっぱり裸を見られるのって抵抗あるし)
浴室と言っても、トイレと洗面台が一体になっている簡素なユニットバスではあるが、今の弥子にとってはこれ以上ないほどの贅沢だった。
カーテンで浴槽を覆い、弥子は早速シャワーを浴び始めた。
ずっとロープが当たっていたため、弥子の素肌にはうっすらとロープの痕が残っていた。
擦って消えるものではないが、思わずごしごしと擦ってしまう。
(昨日はどうなる事かと思ったけど、こうしてシャワーも浴びれるんだし、思ったよりヒドイ目には合わなくて済みそうかも)
『監禁』という言葉のイメージから恐ろしい仕打ちを想像していたが、よくよく考えてみれば勝手知ったる自分の事務所、
そこまで怯える必要もないのかもしれない。
少し安心としたのか、鼻歌まじりに弥子がシャワーを浴び始めた時。
ガチャ、と扉の開く音がしたかと思うと、次の瞬間にはシャッとカーテンが開かれ、そこにネウロが立っていた。
「きゃっ!」
体を隠そうと、思わずその場にしゃがみ込む弥子。
当然、シャワーの水を頭から浴びる格好になってしまう。
「さて。儀式を始めるとするか」
「な、何言ってんの…!?」
意味がわからない、というように弥子はネウロの顔を見上げる。
「奴隷のたしなみとして、余分な毛は剃り落としておかねばな」
ネウロの手には、鈍い光を放つカミソリが握られている。
「え? 私、ムダ毛のお手入れならしてるけど…」
ネウロの言っている意味が分からず、思わず聞き返す弥子。
「…その毛があっては、縛った時に見栄えが良くないのでな」
ネウロは、弥子の髪を掴んで無理矢理立たせると、カミソリの刃をピタリと弥子の陰部に当てた。
「ひぃっ……!!」
大事な部分に刃物を当てられて、弥子はその場で固まった。
「ネウロ…お願い、それだけはやめて…! そんな恥ずかしいカッコ、できるわけないよ…!」
「我が輩以外の前で、裸を見せなければ済む話だ」
「嫌…っ! やめてよぉ…!」
陰毛を一度剃ってしまったら、完全に生え揃うまで少なくとも3ヶ月はかかる。
第一、場所が場所だけに、剃った部分が常に下着に当たるため、生え揃うまでチクチクとした慢性的な痒みに耐え続けなければならない。
確かに他人に晒す部分ではないが、下の毛を全て剃り落とされるなど屈辱以外の何物でもなかった。
ここで流されてしまったら取り返しのつかない事になる―――そう思った弥子は、必死に抵抗した。
「お願いっ! 監禁されても縛られても文句言わないからっ! これだけはやめて、お願いっ…!」
「黙れ。これ以上騒ぐと、大事な部分を切り落とすぞ」
そう言ってネウロは、カミソリの刃を弥子のクリトリスに当てた。
恐怖に身が竦み、大人しくなる弥子。
「ごめん…何でもいう事、聞くから…」
「よろしい」
ネウロは手のひらでボディソープを泡立てると、それを弥子の体に塗りたくっていった。
陰毛を剃るのであれば必要のない胸や腹にまでそれは及び、たちまち弥子の体は泡だらけになる。
わざと卑猥な手つきで体を撫で回され、弥子は羞恥心を煽られる。
乳房を揉むようにして胸に泡を塗りつけられ、更に乳首をギュッと摘まれる。
「……っっ」
声にならない声が、弥子の口から漏れる。
そしてそれは、決して苦痛から出たものではなかった。
「感じているのか」
「ばっ……! こんな脅しみたいな事されて、そんなわけ…」
「ほう。…では、これは何だ?」
そう言ってネウロは、中指で弥子の陰裂をつつ、となぞった。
「はあっ……!」
ネウロの指先には、明らかにボディソープの泡以外の、透明の液体が絡みついていた。
「これから毛を剃られるというのに、貴様のココは物欲しそうに涎を垂らしているぞ。
…とんだマゾの淫乱だな」
「違う…違うのっ……」
弱々しく反論してみるものの、自らの体の変化を突きつけられては、何も言えなくなってしまう。
「では、そこに座れ」
次にネウロは、弥子に浴槽の淵に腰掛けるように指示した。
「……?」
「立っているままではやりにくいだろう。貴様が、大事な部分を傷付けられたいのなら話は別だが」
弥子はぶんぶんと首を横に振り、浴槽の淵にちょこん、と腰掛けた。
「そうではない。その部分が見えるように足を開け」
「……! 嫌っ! そんなカッコ、出来ないよ…」
「それなら、無理矢理開かせるまでだ」
そう言うと、ネウロは弥子の右足をぐいと持ち上げて浴槽の淵に乗せ、無理矢理足を開かせた。
「いやっ、いやあああぁっ……!!」
「動いたらどうなるか分かっているだろうな」
そう言って、ネウロは再びカミソリを弥子の陰部に当ててみせた。
「ううっ…」
弥子が黙り込んだのを見届けて、ネウロは左足も淵に乗せた。
当然、こんな不安定な所でその姿勢を保つためには、両足をしっかり踏ん張っていなければならない。
そうなると、足をM字に開いた体勢を取らざるを得なくなってしまい、自然と弥子の割れ目は広げられ、中の粘膜までもが晒されている状態となってしまった。
「では、始めるぞ」
ネウロはしゃがみ込み、ちょうど頭が弥子の秘部と同じ高さになるようにした。
自分でもじっくりと見た事のないその部分を、他人に見られるという恥辱。
泣き出したいほどの恥ずかしさで、弥子は思わず目をぎゅっとつぶった。
「それにしても、見れば見るほど貴様は淫乱な体だな。こんな幼児体型をしていながら、ここは男を咥え込みたくて仕方無いようだ」
またも、カミソリがピタリと陰核に当てられる。
「そんな事、思ってないよ…!」
心外な事を言われ、思わず反論する弥子。
「ほう。こんな状況でも物欲しそうにヒクついているのは、どう説明するつもりだ」
「そ、それは…」
(誰でもいいわけ、ないじゃない…!)
喉元まで出かかった言葉を、弥子は何とか飲み込んだ。
(…でも、こんな事されて、嫌でたまんないはずなのに…。私、ほんとに淫乱なのかな…)
「貴様を、淫乱な奴隷に相応しい姿にしてやる」
弥子の意思とは関係なく、カミソリが陰毛の根元に当てられる。
ジョリ、ジョリ…という音を立てて、弥子の茂みが徐々に無くなっていく。
「うっ……くっ…」
弥子は声を押し殺して泣いた。
秘所は、徐々に生まれたままの姿に近付いていく。
それでいて、陰裂からは“女”を漂わせているその姿は、一見アンバランスで、そして妖艶だった。
弥子の陰部の毛が殆ど剃り落とされると、次にネウロは開脚によって開かれた割れ目を、更に指で押し開いた。
「い、いやあっ…!」
ひだの奥の粘膜まで晒されて、弥子は声を上げた。
「まだ終わっていないぞ」
そう言ってネウロは、肉ひだの内側の粘膜ぎりぎりの部分まで、毛を剃っていく。
少しでも動けば粘膜部分を切られる恐怖に、弥子の額には冷や汗が滲み出ていた。
「出来たぞ」
最後に体中の泡をシャワーで洗い流され、秘所を覆い隠すものが全くない状態になってしまった自分の体を見て、弥子は愕然とした。
本来あるべき場所に存在していない、それ。
ツルツルになってしまったその部分は、少女から女への変化を始めている弥子の肉体を、更に妖しく際立たせていた。
弥子が思っていた以上に、その姿はいやらしく、余りにも惨めだった。
「うっ…ううっ…」
弥子は、浴室の床にぺたりと座り込んで泣いた。
この悪夢のような一週間が終わっても、もう普通の人間としては生きていけない、と悟ったからだ。
ネウロに髪を撫でられているのにも構わず、弥子はすすり泣き続けた―――。